返済比率25%なら安心?物価高時代の住宅ローン予算の決め方

返済比率25%なら安心?
物価高時代は「残る生活費」で考える
返済比率が基準内でも、食費や光熱費などが上がれば家計の余裕は減っていきます。2026年の物価データと具体的な家計例から、本当に無理なく返せる住宅ローン予算を考えます。
住宅ローンを考えるとき、「返済比率は25%以内が目安」「審査基準に収まっているから大丈夫」と説明されることがあります。返済比率は重要な数字ですが、それだけで購入後の暮らしに余裕があるかまでは判断できません。
なぜなら、返済比率の計算に使うのは主に税込年収とローン返済額であり、毎月の食費、光熱費、教育費、保険料、車の維持費などは直接反映されないからです。物価が上がれば、年収と住宅ローン返済額が変わらなくても、返済後に残るお金は少なくなります。
返済比率20%・25%・30%は家計を比較する目安にはなります。しかし、最終的な住宅予算は、実際の手取り収入から物価上昇後の生活費、住宅の維持費、将来の貯蓄を差し引いて決める必要があります。
2026年の物価はどのくらい上がっている?
総務省統計局が2026年7月24日に公表した全国の消費者物価指数によると、2026年6月の総合指数は、2020年を100として113.6でした。前年同月比では1.7%の上昇です。
2020年=100。平均的な価格水準は2020年より13.6%高い水準です。
2026年6月の総合指数を2025年6月と比較した上昇率です。
2026年6月の前年同月比。日常的な買い物への影響が続いています。
「前年より1.7%なら、それほど大きくない」と感じるかもしれません。しかし、これは直近1年間の上昇率です。2020年を基準にした総合指数は113.6であり、数年間の値上がりが積み重なっています。
以前は月20万円で収まっていた生活が、同じ内容でも月22万7,200円必要になるなら、その差は月2万7,200円、年間では32万6,400円です。住宅ローン返済額が変わらなくても、貯蓄や自由に使えるお金はその分だけ減ります。
消費者物価指数は全国の平均的な価格変動を示す統計です。食費の割合、車の利用、電気・ガスの使用量、子どもの人数などによって、各家庭が感じる物価上昇の大きさは異なります。上の計算は物価高の影響をイメージするための概算です。
返済比率だけでは物価高を判断できない理由
返済比率とは、年収に対して年間返済額がどのくらいを占めるかを表す数字です。
例えば、税込年収500万円、住宅ローンの返済が月10万4,000円なら、年間返済額は約125万円で、返済比率は約25%です。
ところが、この計算には次のような支出が入っていません。
- 食費・日用品
- 電気・ガス・水道代
- 保険料・通信費
- 教育費・習い事
- 車の燃料・維持費
- 将来に向けた貯蓄
- 固定資産税・火災保険
- 住宅の修繕・設備交換
つまり、返済比率は住宅ローン審査や借入額の比較には役立ちますが、物価高を含めた家計の余裕を直接示す数字ではありません。
金融機関の基準内でも「家計に余裕がある」とは限らない
【フラット35】では、総返済負担率の基準が年収400万円未満は30%以下、年収400万円以上は35%以下と示されています。ただし、これは申込要件の一つです。基準内だから無理なく返せる、あるいは融資が必ず承認されるという意味ではありません。
金融機関は返済能力を審査しますが、その家庭が毎月どのような生活を送り、教育や老後にいくら使いたいかまでは決められません。購入後の暮らしを守る予算は、自分の家計から逆算する必要があります。
どちらか一方だけでは不十分です。まず手取り収入と生活費から毎月返せる金額を決め、その金額が返済比率として高すぎないかを確認する順序が分かりやすいでしょう。
返済比率の計算方法や年収別の比較を詳しく確認したい方は、関連記事「住宅ローンの返済比率とは?20%・25%・30%の違い」もご覧ください。
年収500万円・返済比率25%でも余裕がなくなる例
返済比率の数字が変わらなくても、生活費が上がると家計がどう変わるのかを見てみましょう。
税込年収500万円、毎月の手取り収入を33万円、住宅ローン返済を月10万4,000円、返済比率を約25%と仮定します。手取り額は家族構成や控除等で変わるため、説明用の概算です。
| 住宅ローン以外の生活費 | 生活費の変化 | 返済比率 | 毎月残るお金 |
|---|---|---|---|
| 月20万円 | 基準 | 約25% | 約2万6,000円 |
| 月21万円 | 5%上昇 | 約25% | 約1万6,000円 |
| 月22万円 | 10%上昇 | 約25% | 約6,000円 |
| 月23万円 | 15%上昇 | 約25% | 約4,000円の赤字 |
※毎月残るお金=手取り33万円-住宅ローン10万4,000円-住宅ローン以外の生活費。税金・保険・修繕費を生活費に含めるかによって結果は変わります。
生活費が上がっても、税込年収と住宅ローン返済額が同じなら返済比率は約25%のままです。しかし、毎月の黒字は減り、生活費が15%上がるとこの条件では赤字になります。
同じ25%でも、生活費が月18万円の家庭と月23万円の家庭では余裕がまったく違います。子どもの進学、車の買い替え、住宅設備の故障が重なれば、毎月の赤字を貯蓄から補う状態になる可能性があります。
返済比率20%・25%・30%を物価高後の家計で比較
次に、同じ年収500万円でも返済比率が20%・25%・30%で、毎月残るお金がどのくらい変わるかを比較します。
| 返済比率 | 住宅ローン返済額 | 生活費 | 毎月残るお金 |
|---|---|---|---|
| 20% | 約8万3,000円 | 22万7,200円 | 約1万9,800円 |
| 25% | 約10万4,000円 | 22万7,200円 | 約1,200円の赤字 |
| 30% | 12万5,000円 | 22万7,200円 | 約2万2,200円の赤字 |
※税込年収500万円、手取り月33万円、生活費は月20万円が13.6%上昇したと仮定した概算。実際の手取り額・支出・物価上昇の影響は家庭ごとに異なります。
この試算では、返済比率20%でも毎月残るお金は約2万円です。ここから旅行や家具・家電の買い替え、臨時の医療費などを出すなら、十分な余裕があるとは限りません。
一方、返済比率30%では、通常の生活費だけで赤字になる計算です。返済比率が高くなるほど物件の選択肢は広がりますが、物価上昇や突発的な支出に対する耐久力は下がります。
年収、手取り、家族構成、貯蓄、生活費によって結果は変わります。大切なのは、返済比率の一般的な目安を自分の家計へそのまま当てはめず、実際の支出で確認することです。
物価高と金利上昇は分けて試算する
2026年は、物価だけでなく金利にも注意が必要です。日本銀行は2026年7月31日の金融政策決定会合で、無担保コールレートを1.0%程度で推移させる方針を決定しました。
また、同年7月の展望レポートでは、消費者物価(生鮮食品を除く)の前年比が2026年度後半以降に2%をはっきり上回る水準まで高まると予想し、経済・物価・金融情勢に応じて引き続き政策金利を引き上げる考えを示しています。
政策金利と住宅ローン金利は同じものではなく、すべての住宅ローンが同じ時期・同じ幅で上がるわけでもありません。ただし、変動金利を選ぶ場合は、将来の金利上昇で返済負担が増える可能性を考えておく必要があります。
現在の生活費を5%・10%・15%増やし、毎月の黒字が残るか確認します。
住宅ローン返済が月1万円・2万円増えても支払えるかを別に確認します。
手取りが10%減った場合や、一時的に片働きになった場合も試算します。
物価上昇、金利上昇、収入減少は同時に起きることもあります。「生活費10%増+返済月2万円増」など、複数の負担が重なっても赤字が続かないかを確認しておくと、予算の安全性を判断しやすくなります。
物価高時代に無理なく返せる住宅予算の決め方
1.直近6か月~1年の実際の支出を集計する
理想の生活費ではなく、銀行口座やクレジットカードの履歴から実際の支出を確認します。年払いの保険料、自動車税、旅行、家電購入なども12か月で割って月額へ直すと、支出の見落としが減ります。
2.現在の生活費を10%・15%増やす
将来の物価を正確に予測することはできません。そこで、現在の生活費が10%、15%増えた場合を機械的に試算します。月25万円の生活費なら、10%増で27万5,000円、15%増で28万7,500円です。
3.住宅ローン以外の住居費を先に確保する
持ち家では、住宅ローン以外にも固定資産税・都市計画税、火災保険・地震保険、修繕費が必要です。マンションなら管理費・修繕積立金・駐車場代も加わります。
毎月の住居費に12万円使えるからといって、住宅ローンを月12万円にすると、税金や修繕費を生活費から捻出することになります。住居費の総額から住宅ローン以外の費用を引いて、返済額を決めましょう。
4.毎月残したい貯蓄額を「先に」決める
収入から生活費と住宅ローンを引いた残りを貯蓄するのではなく、教育費、車の買い替え、老後資金、住宅修繕費など、目的ごとに毎月残したい金額を先に決めます。
5.最後に返済比率と借入額へ換算する
家計から毎月返せる金額を決めたら、それが税込年収に対して何%なのかを確認します。そのうえで、金利と返済期間を入れて借入額を逆算します。
この順序なら、「銀行が貸してくれる上限」から物件を選ぶのではなく、「生活を維持しながら返せる金額」から物件予算を決められます。
返済比率と毎月返済額を自分の条件で確認
年収・金利・返済期間を入力し、返済比率ごとの借入可能額や毎月返済額を比較できます。現在の条件だけでなく、金利を上げた場合も試してください。
よくある質問
一律に安心とはいえません。同じ返済比率25%でも、手取り収入、家族構成、生活費、他の借入れ、貯蓄額によって余裕は異なります。物価上昇後の生活費と住宅の維持費を含め、毎月いくら残るかを確認してください。
金融機関は年収、返済比率、他の借入れ、年齢、勤続年数、担保評価などを総合的に審査します。ただし、各家庭の食費や教育費などを細かく反映して、購入後の生活余力を保証するものではありません。自分の家計で別に確認する必要があります。
20%は25%・30%より返済負担を抑えやすい水準ですが、必ず余裕があるとは限りません。年収に対して生活費が高い家庭や、教育費・車の費用が大きい家庭では、20%でも毎月の黒字が少なくなることがあります。
固定金利は返済額を確定しやすく、変動金利は当初の金利が低い場合があるなど、それぞれ特徴があります。物価高だけで決めず、金利差、返済期間、家計の余裕、金利上昇への耐久力を比較して選ぶ必要があります。
総返済負担率には、自動車ローン、教育ローン、カードローン、分割払い、リボ払いなどが含まれることがあります。【フラット35】でもこれらの借入れが対象として示されています。取り扱いは金融機関により異なるため、事前審査で正確に申告・確認しましょう。
まとめ
返済比率は、年収に対する住宅ローン等の年間返済額を確認する重要な数字です。しかし、返済比率の計算だけでは、食費や光熱費などの物価上昇によって家計の余裕がどのくらい減るかまでは分かりません。
2026年6月の全国消費者物価指数は、2020年を100として113.6です。返済額が変わらなくても、生活費の上昇によって毎月の貯蓄余力が小さくなる可能性があります。
物価高の今は、返済比率の上限から借入額を決めるのではなく、物価上昇後の生活費と必要な貯蓄を手取り収入から差し引き、毎月返せる金額を先に決めることが大切です。
- 総務省統計局 2020年基準 消費者物価指数 全国 2026年6月分
- 総務省 消費者物価指数(全国6月)最近の動向
- 日本銀行 経済・物価情勢の展望(2026年7月・基本的見解)
- 日本銀行 当面の金融政策運営について(2026年7月31日)
- 住宅金融支援機構【フラット35】ご利用条件
データ確認日:2026年8月4日。本記事の家計・返済額の試算は一定条件に基づく概算です。実際の手取り額、生活費、適用金利、返済額、借入可能額および審査結果は、世帯・金融機関・商品・申込条件によって異なります。
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